「ううっ、くっ、くうっ」


 菊之助は大きく首筋をのけぞらせ、歯を食いしばりながら悲痛なうめきを洩らした。
伝助の指先がその筋肉を強引に割って内部へ食いこもうとするのである。



 「よっ、前髪の若衆、ケツの穴をこんな事されるのは辛えか。へへ、そんなに辛そうな顔する所を見ると、まだ手前、お殿様の御寵愛(ごちょうあい)を受けちゃいねえようだな」


 めでたく仇討ちの本懐を遂げて帰参すれば、ういやつじゃ、ういやつじゃといってお殿様に可愛がられる段取りになっているんだろ、と酒盛りする雲助とやくざ達は哄笑する。

「ハハハ、それがお気の毒に、仇に生け捕られてケツの穴をほられる事になるとはな」

 
ざまあ見やがれ、とやくざ達は嘲笑するのだった。
 親の仇である熊造と伝助の二人に前面と後面を同時にいたぶられるという言語に絶する羞ずかしめを受け、声を慄わせて口惜し泣きする前髪の菊之助 ―― おのれ、おのれ、と自分を満座で羞ずかしめる熊造と伝助に対し、血を吐くような憎悪感で全身を悶えさせ、気持ちを逆上させていた菊之助だったが、そんな心とは逆に、無念にも切なさを伴った疼くような快感が下腹の方にこみ上げてくる。


 伝助に臀部をたち割られ、菊の座を凌辱された瞬間は全身が凍りつくばかりの汚辱感と苦痛しかなかったが、次第にその苦痛が被虐味を帯びた一種の快感にうつりかわっていくのを菊之助は苦悩の中でぼんやり知覚するのだった。

 「おい、おめえの簪(かんざし)をかしな」

 
伝助はお春の髪より珊瑚(さんご)玉のついた簪を抜き取った。

 「よ、可愛い若衆、こいつを呑みこんでみな」

 伝助は珊瑚玉の方からその簪を菊之助の臀部へ押しこめていこうとする。

 「うっ」

 と、菊之助は昂ぶった声を上げ、全身をガクガク痙攣させた。

 「こういうのが稚児いじめっていうんだ。わかったかい、お坊っちゃん」

 伝助はせせら笑いながらジワジワと虐(いじ)めていくのだ。

 「痛えのは我慢しな。お前さんにたたっ斬られた雲助の事を考えてみろ。これ位の痛さじゃなかったはずだぜ」

 「ああっ」




 美少年の可憐な菊花は珊瑚玉をしっかりとくわえこむのだった。

 「もっと深く呑みこんでごらん」

 お春は残忍な発作に見舞われたのか、腰をかがめて簪の柄に手をかける。