それは浪路と祝言をあげてから間もなくの出来事で、その不慮の事故によって主膳が性的不能者に陥ったとしたならば、浪路は女として何とも不幸な境遇にある
―― 重四朗はその事実を熊造の口から聞かされると、
「それは真でござるか、浪路どの」
と、浪路を興味深そうに見つめた。浪路は何も答えなかったが、薄く眼を閉じ、容易にやまない荒い喘ぎの中で、重四朗の問いに反応するようにして、一層頬を赤らめたのだった。
「左様でござるか。ほほう、となれば浪路どのが女だてらに剣の修行に励んでこられたのも納得出来る」
つまり、肉体の火照りを忘れんがためではないか、といって重四朗は笑い、 |
「それでは、こうして捕えられて素っ裸にされ、数々のいたぶりを受ける事はむしろ本望ではないかな、浪路どの。御主人が不能であるなら女盛りのその身体があまりにも可哀そうだ」
父の仇の熊造と伝助の手管に煽られてそのように燃えさかってしまったのも、つまり、長い間の欲求不満が一気に炸裂し、火となって燃え上がったようなものだという意味の事を重四朗はいうのである。
(お、おのれ。夫まで誹謗(ひぼう)し、羞ずかしめる気か、なんという口惜しさ……)
と、麻のように乱れた浪路の心に追い討ちをかけられたような屈辱感がこみ上がったが、それも一瞬の事で、官能に五体がすっかり、疲れ切っている浪路には反発の気力など完全に喪失してしまっている。
それに夫が性の不能者という事は事実であり、今、自分が父の仇の手でいたぶられるという言語に絶する苦悩の中で、口惜しくも不思議な妖しい性の快美感を知覚したのも事実で、女の性のもろさというだけでは片づかない何かがそこにあった事も事実である。
ああ、何というみじめな ―― 浪路は上気した顔を横にねじって声を上げて泣きじゃくった。
「よし、熊造、今度は拙者共と少し交代しろ。拙者が夫、戸山主膳になったつもりで浪路どのをいささかお慰めしてみたい」
熊造と伝助だけに浪路の柔肌をいたぶらせておくのはちと不公平だと重四朗は笑いながら熊造の手より太巻きの筒具を取り上げる。
「いざ、浪路どの。拙者も今度は刀を張形に持ち替えての勝負だ。尋常にお立ち合い願おうか」
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重四朗は熊造達の指先に凌辱され、蠱惑(こわく))の花びらをふくらませている浪路のその部分へ手にした責め具をそっと触れさせるのだった。
とたんに全身に悪寒が走ったように浪路は再び激しい慄えを示し、真っ赤に上気した顔を激しく揺さぶりながら、
「お、お許しを ―― ああ、重四朗さまっ」
と、ひきつった声をはり上げた。 |
今度は熊造や伝助にかわって、浪人達が欲情に狂った眼をギラつかせながら戸板に縛りつけられた浪路にどっとからみついていった。
健作にかわって今度は待ちかまえていたように村上進三郎がその毛むくじゃらの手でゆさゆさと浪路の麻縄に緊め上げられた乳房を荒々しく揉み始め、卵兵衛、影八など、札つきの不良浪人達が狂おしく身悶える浪路の柔肌を押さえこんだ。
「今さら、お許しはないだろう。拙者の可愛い門弟どもをことごとく木刀で打ち据え、当道場を荒らし廻って去ったのはどこのどいつだ」
と、重四朗が荒っぽい口調になっていうと、浪路のうねらせる太腿をしっかり押さえこんだ進三郎が、
l「そうだ、貴様にあの時、拙者は木刀で頭を打たれた。それ以来、拙者の頭はちとおかしくなったのだぞ」
といって他の浪人達をゲラゲラ笑わせた。
「ここにいる門弟どもは皆、浪路どのに相当な恨みを抱いているわけだ。さ、おとなしくこれを呑みこみ、しっかりと喰い緊め、女だてらに道場破りを働いた罪を詫びていただこう」
重四朗が当てがったそれを一気に沈めようとすると、浪路はけたたましい悲鳴を上げ、
「嫌っ、嫌でございますっ」
と、浪路は激しく泣きじゃくりながら必死になって腰を揺さぶり、重四朗が一気に押し込もうとする矛先をそらせようとするのだ。
「これ、これ、そのようにいつまでも駄々をこねるのではない。心は拒否を示しても身体はこの通り、はっきり扉を開いて求めているではないか」
左右に開いたあだっぽい乳色の太腿を狂おしげに浪路がもじつかせると、一層、そのため、官能の火に油を注がれた思いになり、重四朗は眼を血走らせ、激しい息使いになった。 |
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