「浪路どの。いかがでござる。憎みても余りある親の仇の手管でこのように燃え上がった心地は。ハハハ、さぞ、口惜しい事でござろうな」

と、定次郎がからかうと、浪路は汗と涙で濡れた頬にべったりと乱れ髪をもつらせながら、

「口、口惜しい----。舌を噛んで死ねぬのが、無、無念でございます」

 と、息も切れ切れの声でうめくようにいうのだだった。

「そう、そう。舌を噛むような真似をなすっちゃ、菊之助坊っちゃまは即座にあの世行きでござんすからね」

 まあ、ぜいぜい口惜しがって頂きましょうか、と熊造は乳房を粘っこく揉みほぐしている健作と呼応して、更に指先の技巧をこらしたが、その時急に瘧にでもかかったように浪路の全身に戦慄めいた痙攣が生じた。

「やめてっ、ああ、もう、やめてっ」

 と、浪路は何かにおびえたような真っ赤な頬をねじるように横にそむけ、激しく奥歯を噛み鳴らす。浪路に快楽の頂点が近づいた事に気づいた熊造はあわてて愛撫を中断した。

「まだ、気をやるのは早過ぎますぜ、奥様」

 熊造はニヤニヤ笑いながら、最高潮に達した浪路の興奮をなだめるよう、乱れて、おどろに濡れた絹のような悩ましい繊毛を優しく掌で撫ぜさする。
 こうなれば、何とでもこちらの好きなようにいたぶり抜く事ができると、余裕を持った熊造と伝助は調子に乗って、冷酷さを発揮し、わざと一呼吸を浪路に入れさせるのだった。
 憎悪の的以外何者でもない父の仇の手管に操られるままとなり、今、正に淫情に破れて狂態をさらしかけた浪路は、必死に耐えてその生恥は免れたものの、そのため、一層の屈辱感を味わわねばならぬ事となる。

「そら、奥様。健作がわざわざずいき巻きのこんな立派な張形を作ってくれたんだ。どうせなら、こいつを奥深くまでしっかりとくわえこみ、こってりと気をおやり遊ばした方がいいじゃありませんか」

 熊造は太巻きの珍妙な筒具を手にすると、それで小刻みに慄える浪路の割り開いた太腿をくすぐるのだった。

「ハハハ、何もそんな情けない顔をする事はあるまい。浪路どの、仇討ち旅に出られ、御主人と枕をかわさぬようになってもう久しくなるはずだ。淋しい思いをしておられたのではないか。熊造の持つそれを戸山主膳の愛(いと)しい一物と思い、心いくまで絞め上げて見られよ」

 重四朗がからかうと、ところがね、重四朗先生と、熊造は太巻きの張形を金盥(たらい)の中の微温湯に浸しながら嬉しそうにいった。

「戸山主膳はどうもあの方はさっぱり駄目らしいようですぜ」

「ほう、どうしてだ」

「剣術の稽古の最中、背骨をかなり痛めた事があるのです。それがもとで、一物は不能になったらしいと門弟の一人が私に話した事があります」