最後の敵に対して、今や勝利は目前。
冥獄十虐神の筆頭、恐虐神ダグムとの戦いは用意していた秘策が見事に的中する形となった。
あらかじめ第4位階以上の魔法が使えないよう『魔封じの燭台』で結界を張っておいた貸し倉庫の一画へ、秘宝『彼方への扉』をもって瞬時にダグムと自分達を空間移動させたのだ。
本来であれば、『魔封じの燭台』も『彼方への扉』も起動の方法すら検討もつかないような失われた古代魔導技術の結晶である。魔導具を超えた魔導具、魔宝具ともいうべきシロモノだ。
しかし、マナブルーこと蒼香の夫、若き考古学者 八烏は極めて優秀な男であった。以前に解読していた古代遺跡の碑文から、魔宝具が封印されている遺跡には、極めて高い確率でその魔宝具が使用されていた時代の記録と記憶が収められた説明書の役割を果たす魔導具も眠っていることを推測しており、秘宝と同時にそれらを探し出すことも怠らなかった。
そして見事、二つの魔宝具と共にそのマニュアルとでもいうべき魔道具を持ち帰ってきたのである。
結果、四人のマナレンジャー達は完全にダグムの裏をかくことに成功したのである。
……だが。
この最後の戦い、二つの魔宝具を切り札とした最終決戦に臨むにあたって。
四人のマナレンジャー達と、一人のマナレンジャーとの間に決定的な意見の相違が発生し、大きな波瀾があったのも事実だった。
さらなる切り札となる魔導具や魔宝具を調達すべく、今後はマナレンジャー全員で世界各地を転戦してまわり、最終決戦は数年先まで見送るべきだと主張する黄色の戦士にしてマナレンジャー最強の男、マナファザーと。
長きにわたる戦いで目に見える形で心身を消耗させてしまった白色の戦士にしてマナレンジャーの要、マナマザーの安全のためにもこれ以上は時間をかけず、短期決戦で挑むべきだと主張する三人の子供達と、その子供達の説得に折れた形となった母親が。
互いに譲らない姿勢で、主張と感情をぶつけあうこととなってしまったのだった。 |