火照った菊之助の頬に赤く染まった頬をすり寄せているお銀を眼にすると、三五郎一家の乾分達はゲラゲラ笑い出す。

「いいんですかい、お銀姐さん。そんな所をうちの親分に見つかると、叱られますぜ」

 いいじゃねえか、と、熊造が茶碗酒を一気の飲み乾していった。

「明日になりゃ、重四朗先生の試し斬りですっぱり根元から切り落とされ、松茸の焼酎漬けになるんだ。今夜一晩ぐらい、お銀姐さんの玩具にさせたっていいだろ」

 いいか、若造、と、武造は打ちひしがれている菊之助を痛快そうに見ていった。

「もうしばらく休んだら、今度は女達の手で当てずりしてもらうんだ。若えんだから、あと一度や二度しごかれたって平気だろ。今みてえに元気よく噴き出させて見せるんだぜ」

 グウの音も出ねえ位に今夜は絞り出させてやるからな、と乾分達ははやし立てるのだ。

「さて、今度は少し、姉上どのの方のご様子をのぞきに行くか」

 熊造は伝助をうながし、菊之助のしたたりを受けた小鉢を持って立ち上がる。

「じゃ、姉上にこいつを見せ、おめえが一人前の男である事を報告してやるからな」

 熊造が楽しそうにいうと、菊之助は猿ぐつわされた顔を上げ、何ともいえぬ悲痛な表情を熊造に見せた。その哀しげな眼にはねっとり涙が滲んでいる。

「ううっ、ううう ―― 」

 急にお銀と再び菊之助に汚辱の思いを味わわせるべく、腰をかがませ、鞭のように固く緊まった両腿を撫でさすりながら、股間のそれをまさぐり始めると菊之助は激しい狼狽を示し、猿ぐつわの中で悲鳴ともうめきともつかぬ声を洩らした。

「大丈夫さ、若いんだから。しばらくこうしていりゃすぐに元通りになるさ」

 お銀は萎えた菊之助の肉塊をつかんで媚を含んだいい方をしながら優しさをこめてゆるやかにしごき出している。

「もうここまで恥をさらしちまったんだから、も一度、恥を忍んでしたたらせ、仇討ちの事なんぞ綺麗さっぱり忘れちまいな」

 十七歳とはいえ、一刀流の女剣士、戸山浪路の実弟だけあって、剣を持たせれば美しい顔立ちに似ず、なかなかの使い手で油断はならない。だから、こうして徹底して男の精気を絞りとり、腰くだけにさせるのだとお銀は淫猥な笑いを口元に浮かばせながら理屈をこねているのだ。
 さも苦しげに汗ばんだ額をしかめ、極端なまでの嫌悪の表情を見せる菊之助だったが、それとは無関係にお銀のいう通り菊之助の肉塊は女の手の中で元通りの屹立を示していくのである。

「ハハハ、もうその気になっているじゃないか。じゃ、今度はお姐さんの方にたっぷり楽しませてもらうんだぜ」

 熊造は猿ぐつわの中で苦しげに喘ぎ出した菊之助の紅潮した頬を指ではじき、道場から出て行くのだった。