浪路は遂に耐えきれず、断末魔の昂ぶった悲鳴を上げた。前方と後方から交互に貫通され、背骨も腰骨もバラバラに打ち砕かれた感じ、全身が灼熱の感覚で火のように燃えさかり、眼の中に火花が散ってクラクラとめまいが生じたのである。
 キューと下腹部の筋肉が痙攣し、名状の出来ぬ妖しい強烈な快美感が頭の芯にまで響き渡ってくる。

「ああ、もう、もう、耐えられませぬっ」

 ぐっと汗ばんだ艶っぽいうなじを浮き立たせ、歯を噛み鳴らしながら全身をガクガク慄わせる浪路に気づくと重四朗は、浪路のその極限の状態に自分達を合致させようとして荒々しく息づきながら、血走った目で浪路の背後から責めかかる定次郎の眼を見た。
 共に合図しあって重四朗と定次郎は激しく腰部を躍動し合い、一気に前後から責めかかって浪路とその極限をぴったり合わせたのだ。

「ああっ」

 と、浪路は再び、絶息するような鋭いうめきを洩らした。自分が今極めた悦楽の頂点に、二人の男もそれに合わせて自失し合った事を浪路は気が遠くなりかける陶酔の中ではっきりと知覚したのだ。
 言葉ではいい表せぬ被虐の熱い戦慄に浪路の緊縛された汗みどろの裸身はピーンと硬直した。柔らかく溶けた上層の内側深くに、そして固く緊まった下層の奥深くに、同時に熱い男の滴りを受け入れたこの一種異様な妖しい快感は何にたとえればいいのか ―― 女の羞恥の二つの源泉を前後からからみつく男二人の鉄のように硬化した巨大な肉塊で押しふさがれたまま浪路は息のつまりそうな窒息感の中で生まれて初めて味わった稲妻のような快美感に全身をガクガク慄わせた。


文 / 鬼ゆり峠 下巻より引用